志望動機をAIに書かせてみたけれど、これで出していいのか分からない——という相談をよく受けます。
先に立場を書いておくと、私はベンチャー企業の執行役員として採用を管掌していて、自社の選考にもAIを組み込んで運用しています。だから「AIを使うな」とは言いません。使い方の話をします。
なお志望動機そのものの組み立て方(何を何の順で言うか)は別記事で扱っています。この記事はそのうちどこまでAIに任せられるかだけに絞ります。

AIが埋められる部分と、埋められない部分
志望動機を分解すると、AIで足りる部分と、絶対に足りない部分にきれいに分かれます。ここを混ぜたまま丸投げするから、出てくる文章が使えないのです。
- 文章の整え(長い説明を要点にまとめる、語尾をそろえる)
- 順番の並べ替え(どれを先に言うと伝わるかの候補出し)
- 公開情報の整理(事業内容や採用ページを読み込んで要約させる)
- 言い回しの候補(自分の言葉が硬いときの別案出し)
- あなたが実際に見聞きしたこと(面談で誰に何を言われたか、どの記事を読んで何を思ったか)
- なぜ他社ではないのか(比べた結果としての選択)
- 入社後にやりたい具体(どの業務を、どの範囲まで)
- 自分の経験との接点(前職の何が、どこで使えるのか)
ちち読んでいて「これは書ける人だな」と感じるのは、下の4つが具体的に入っているときです。上の4つはどれだけ整っていても差になりません。
理由は単純で、上の4つは誰がAIに頼んでも同じ品質で出てくるからです。整った文章は、もう差別化要素ではありません。
埋まらない部分は、AIに「質問させて」引き出す
では埋まらない部分をどうするか。自力で思い出すのは意外と難しいので、AIには書かせるのではなく、聞いてもらいます。
順番が逆になっているのが、うまくいかない原因です。
うまくいかない順番
求人票を貼って「志望動機を書いて」→ 出てきた文章を手直しする
→ 素材がないまま整った文章ができるので、直しようがない
うまくいく順番
先に自分の素材を出す → AIに深掘りの質問をさせる → 答えたものを整えさせる
→ 素材が自分のものなので、文章も自分のものになる
深掘りに使う問いは、この3つで足ります。
- 「その会社を知ったあと、何を調べましたか」
-
調べた行動そのものが素材になります。採用ページのどこを読んだか、代表のインタビューを見たか、面談で誰と話したか。ここが1行入るだけで、他社にも出せる文面ではなくなります。
- 「他に受けている会社と、どこが違いましたか」
-
比較した結果を言えると、選んだ理由になります。逆にここが答えられないと、その会社を選んだ理由が実は無いということでもあります。
- 「入社した初日、何から手をつけたいですか」
-
抽象的な貢献ではなく、具体的な業務が出てきます。ここが言える人は、求人票をきちんと読んでいます。
この3つに自分で答えたら、その答えをAIに渡して整えてもらう。これが正しい順番です。
埋まらない部分を引き出すための、プロンプト例
「相棒として使う」と言われても、具体的にどう指示すればいいか迷いますよね。そこで、コピーして使えるプロンプト例を用意しました。
①自分の本音を引き出すプロンプト
あなたは転職のキャリアアドバイザーです。私が「◯◯という会社に応募したい理由」を話すので、書かずに、深掘りする質問を1つずつ投げかけてください。私の答えがあいまいなときは、さらに具体例を引き出す質問をしてください。
このプロンプトの肝は「書かずに、質問して」と指示すること。AIが代筆モードに入らず、あなたの言葉を引き出す相棒になってくれます。
②素材を整える(仕上げ)プロンプト
以下は私が書いた志望動機の素材です。【素材を貼る】内容は変えず、誤字脱字の修正と、冗長な部分を削って読みやすく整えるだけしてください。新しいエピソードや事実を勝手に追加しないでください。
「内容は変えず」「勝手に追加しないで」と縛るのがポイントです。これで、あなたの体験を保ったまま、文章だけがプロの仕上がりになります。
注意:AIに渡してはいけない情報
便利なAIですが、入力する情報には注意が必要です。応募先企業の機密情報や、前職で知り得た非公開情報、他人の個人情報は入力しないのが鉄則。サービスによっては入力内容が学習に使われる可能性もあります。
自分の経歴や志望理由を整理する分には問題ありませんが、「外に出てまずい情報は入れない」という意識だけは持っておきましょう。情報の扱い方も、採用側が見ているビジネスマナーの一つです。
AI活用について、応募者からよく聞かれること
Q. AIを使うと、バレたら不利になりますか?
「AIを使ったこと」自体で落とすことはありません。問題は「中身が薄いこと」だけです。むしろ、AIをうまく使って自己分析を深め、論理的な志望動機を作れる人は、仕事でもAIを活用できる人材として好印象です。怖がらず、賢く使ってください。
Q. どこまでAIに頼っていいのでしょう?
目安は「中身は自分、仕上げはAI」。経験や志望理由といった”素材”は必ず自分で出す。構成・表現・誤字チェックはAIに任せてOK。素材まで丸投げすると、途端に「誰でも書ける文章」になります。
Q. 面接対策にもAIは使えますか?
使えます。想定問答の洗い出しや、回答の論理チェックには非常に有効です。ただし暗記した回答を読み上げるのは逆効果。AIで準備した内容を、自分の言葉で会話できるレベルまで落とし込むのがコツです。
Q. 文章を書くのが苦手でも、AIがあれば大丈夫ですか?
むしろ書くのが苦手な人ほど、AIは強い味方になります。要点さえ自分で出せれば、読みやすく整える作業はAIが得意とするところ。「うまく書けないから」と応募をためらう必要はもうありません。大事なのは文章力ではなく、自分の経験と熱意という”中身”です。そこだけは自分で用意しましょう。
まとめ|整った文章は、もう差にならない
・志望動機は「AIで埋まる部分」と「埋まらない部分」に分かれる
・埋まるのは文章の整え・順番・公開情報の要約・言い回し。ここは誰がやっても同じ品質になる
・埋まらないのは、調べた行動/他社との比較/入社後の具体/自分の経験との接点
・順番を逆にする。先に自分の素材を出し、AIには質問させ、最後に整えさせる
・深掘りの問いは3つで足りる(何を調べたか/他社とどう違ったか/初日に何から手をつけるか)
AIを使うこと自体を隠す必要はありません。差がつくのは、AIに渡す素材が自分のものかどうかだけです。
書類のほうで「AI任せ」がどう見えるのかを知りたい


面接の準備にAIをどう使うか











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