その失敗、詰められたのは誰でしたか|面接の失敗談は題材選びで決まる

面接で失敗・挫折経験から立ち直る女性

「これまでに経験した失敗や挫折を教えてください」——面接でこう聞くと、返ってくる話でいちばん多いのは、この二つです。

  • 「チームの目標が未達で、悔しかった経験です」
  • 「上司の方針に納得できないまま、進めることになった経験です」

どちらも本当にあったことだと思います。ただ、聞き終わったあとの私の手元には、評価として書けることが何も残りません。その出来事で責任を問われたのは、本人ではないからです。目標を外して詰められたのは責任者で、方針を決めたのは上司です。

失敗談の質問は、答え方を整える前に勝負がついています。決めているのはどの出来事を選ぶかです。この記事では、私が題材を選別している基準と、実際に評価が上がった話・沈んだ話を並べます。

目次

「詰められるのは誰だったか」で、題材は選別できる

この判定に使っているのは、書類と面接で人を見るときの判断軸のうち、3番目に置いている項目です。「責任範囲——失敗したとき、詰められるのは誰か」。ここを軸に聞いているので、話の深刻さでは評価が動きません。

さきほどの二つのような話を聞き終わったあと、私の中に残るのは疑問ひとつだけです。

ちち

「それで、あなたは何を決めたんですか?」

自分が詰められる立場になかった出来事は、痛みの所在が自分の外にあります。だから、どれだけ丁寧に語られても、その人の判断を測る材料にはなりません。悔しさや納得できなさは伝わるのですが、伝わったところで評価欄に書くことがないのです。

逆に言えば、判定はとても単純です。その出来事がうまくいかなかったとき、責任を問われたのは自分だったか。ここに「はい」と言えるなら、題材としては成立しています。

規模はいらない。実際に評価が上がった題材は2種類だけ

この基準を通ったうえで、私の記録の中で明確に評価が上がった題材は、次の2種類に集まっています。

他人が起こしたトラブルを、引き受けて自分で収めた話

取引先が途中で抜けてしまった案件を巻き取った話、担当者が辞めてしまった案件を一人で引き受けて終わらせた話。どちらも、火をつけたのは本人ではありません。それでも評価は上がります。

実際に、一次面接を担当した社員が書いた評価がこれでした。「重大なトラブルが起きたときにも逃げずに、自ら解決策を立てて実行できる」。この一行が、その方の最大の評価ポイントになりました。原因を作ったかどうかは、実は見ていないのです。引き受けた瞬間から、詰められる立場は自分に移っているからです。

自分の判断ミスに、自分で気づいて自分で動いた話

入った会社のやり方に途中で違和感を持ち、誰に言われるでもなく自分で辞めた——という話をされた方がいました。経歴だけ見れば短期離職です。それでも私は書類にプラスの評価をつけました。理由は一言で、「気づけただけでいい」と思ったからです。先の「1年で見限るのは検討不足と読まれる」という話と紙一重に見えますが、違いは明確でした。この方は環境への不満ではなく、自分の見立てがどこで外れたのかを語っていたのです。

選んだのが自分、おかしいと判断したのも自分、動いたのも自分。全部そろっています。ちなみに独立して事業がうまくいかなかった話も、私はマイナスに扱っていません。自分で決めた分だけ、失敗は自分のものになるからです。

大きな失敗が思い当たらない、という心配はしなくていいです。締め切りに間に合わせられなかった、確認を飛ばした、提案が通らなかった。日常のつまずきで十分に成立します。問われているのは規模ではなく、そこに自分の判断があったかだけです。

沈むのは、痛みが自分の側にない話

逆のパターンも挙げます。実際に評価を下げたものです。

ひとつめは「挑戦して、すぐやめた」話。これは意外に思われるかもしれません。新しい分野に移って1年で見切りをつけ、また転職している——という経歴の説明を聞いたとき、私はこう書きました。「業務内容を理解したうえで就職して1年で見限るのは、入る前の検討が足りなかったのではないか」。

挑戦したこと自体は評価されます。ただ粘った長さがないと、挑戦の話は「見通しの甘さ」に反転します。挑戦を題材にするなら、どれだけ食い下がったかを必ずセットにしてください。

ふたつめは他責に読める話。本人にその気がなくても、原因の説明が外側に並ぶと「他責の片鱗を感じる」と書かざるを得なくなります。事実として上司や環境の問題があったとしても、その中で自分が何を選んだかを一言添えるだけで、印象は変わります。同じ変換は退職理由の説明でも効くので、そこは「面接の退職理由で印象が落ちるのは「不満」ではなく「矢印の向き」」に分けて書きました。

みっつめは苦労話で終わる話。つまずきの描写は具体的なのに、最後が「つらかった」「大変でした」で止まる。ここは惜しいパターンで、あと一文「だから、こう動いた」を足すだけで題材が成立します。

私が答えるとしたら、どの話を選ぶか

基準を出しておいて自分は出さないのは不公平なので、私が選ぶ話を書きます。

品質を巡って取引先と揉め、訴訟の一歩手前まで行った案件があります。私が起こしたことではありません。担当でもありませんでした。引き受けた時点で、こちらが詰められる側になっただけです。

最初にやったのは、経緯報告書を自分で書くことでした。現場が話している経過と、社内に残っている記録を突き合わせたら、両者がずれていました。つまり、こちらの言い分は最初から一枚の絵になっていなかったわけです。

そこで決めたのは、正面から争わずに、事実で請求の中身を削るという方針でした。顧問弁護士と組み、相手の請求項目を一つずつ検証して、粗利がプラスのまま終わらせました。派手さはまったくありません。

それでもこの話を選ぶ理由は、はっきりしています。方針を決めたのが自分で、決め方を間違えていたら詰められたのも自分だったからです。逆に、同じ案件で「現場が大変そうで気の毒だった」を話しても、私の基準では一銭にもなりません。

公務員から民間に移ろうとしていたころ、私はこういう話が自分には無いと思い込んでいました。ミスが許されない前提の仕事ばかりで、語れる失敗談がないと引け目を感じていたのです。いま振り返ると、単に探し方が悪かった。前例のない案件を手探りで進めて途中で軌道修正した経験や、正確さを求められる業務で確認漏れを防ぐ仕組みを自分で作った経験は、どちらもこの基準を通ります。地味であることは、まったく問題になりません。

題材が決まってから、話す順番を決める

ここまで来たら、順番の話は簡単です。状況 → つまずき → 立て直し → 学び。この並びで、全体の半分を「立て直し」に使います。

複数の部署にまたがる報告資料の取りまとめを任されていました。(状況)

各部署への確認を飛ばしたまま進めてしまい、提出直前に数字の食い違いが出て、納期を遅らせかけました。(つまずき)

すぐに上司へ報告して優先順位を決め直し、関係部署を直接回って数字を突き合わせ、期限内に修正を終えました。(立て直し)

以来、着手前に指示の意図と確認事項をすり合わせる習慣をつけ、確認項目はチェックリストにしています。(学び)

この例文が成立しているのは、確認を飛ばす判断をしたのが本人だからです。順番が整っていても、題材が基準を通っていなければ、同じ形で話しても評価は動きません。順番は後から直せますが、題材は差し替えるしかないので、迷ったら題材に戻ってください。

なお、この質問が出てくるのは主に一次面接です。選考のどの段階で何を見られているのかは、「50社出して40社は書類で落ちた」に段階ごとの通過率で整理しています。

最後に残りがちな迷い

正直に話して不利にならないか。逆です。完璧を装う人のほうが「振り返る習慣がないのかな」と不安になります。ただし、致命的な違反や処分につながった話は避けてください。これは正直さの問題ではなく、採用リスクとして記憶されてしまうからです。

「挫折」と「失敗」でどちらを話すか。分ける必要はありません。聞かれた言葉に近いほうを選べば十分です。どちらでも、判定しているのは詰められるのが誰だったかだけです。

題材が使えるかどうかの1問テスト

その出来事がうまくいかなかったとき、責任を問われたのは自分だったか。「はい」なら、規模が小さくても題材として成立します。「いいえ」なら、話し方を工夫しても評価は動きません。別の場面を探してください。

この基準は書類でも同じように働きます。職務経歴書の実績が「達成した数字」だけで終わっていると、面接で同じ壁に当たります。書類の側から整えるなら「採用担当が教える職務経歴書」が先です。

失敗談の質問は、欠点を探すために置かれているわけではありません。自分で決めた経験がある人かどうかを見る場です。決めた回数が多い人ほど、話す材料も多く持っています。

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この記事を書いた人

サビ残100h/月の公務員から30歳で大手IT企業に転職し、年収2倍(360→750万)・残業10h未満を達成。現在はベンチャー企業の執行役員として採用を管掌し、累計1,000名以上の面接と5,000枚以上の履歴書・職務経歴書チェックを通じて200名以上の採用に関与(新卒〜執行役員クラス)。RPOしていた採用の内製化、ATS導入による一元管理、多拠点採用まで自ら設計・運用しています。"採用する側"の本音をもとに、キャリアに悩む方々の道標となる情報を発信しています。

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