職務経歴書のファイルを開いて、そこで手が止まる。
行政の仕事を何年も真面目にやってきた人でも、それを民間企業向けの2枚に落とし込むのは、人生で初めての作業です。止まって当然だと思います。
この記事は、職務経歴書を実際に完成させるための手順書です。6つのブロックに何を入れるのか、行政の言葉をどう置き換えるのか、上から順に埋めていける形で並べました。
なお、できあがった書類が採用担当にどう読まれるか——どこを何秒で見ているのか、何で見送られるのか——は、この記事では扱いません。採点する側の目線は別の記事に分けてあります。先に採点基準を知ってから書き始めたい方は、こちらを読んでから戻ってきてください。

職務経歴書は「6つのブロック」でできている
白紙から文章をひねり出そうとすると、まず間違いなく行き詰まります。職務経歴書は作文ではなく、決まった6つの枠を埋めていく書類だと考えたほうが早く終わります。
【職務経歴書の6ブロック】
1.要約
2.経歴
3.活かせる知識、経験、技術
4.資格、語学
5.PCスキル
6.自己PR
紙の上ではこういう見た目になります。新卒のときのエントリーシートと違い、フォーマットが決まっているぶん、埋めるべき中身がはっきりしているのが職務経歴書です。

中身に入る前に、書類そのものの仕様を決めておきましょう。ここで迷う時間がもったいないので、先に固定してしまいます。
【先に決めておく仕様】
・分量:A4で2枚(3枚まで)
・提出形式:指定がなければPDF
・ファイル名:職務経歴書_氏名_20260726.pdf のように、誰の何かが開かずに分かる形
・写真:職務経歴書には不要(履歴書側に付ける)
ちち絶対的な正解のある世界ではないのですが、まずはセオリーをおさえることが大切です。
行政の仕事を、外の人に通じる言葉に置き換える
公務員から転職する人の職務経歴書で、いちばん多くの取りこぼしが起きるのがここです。
書いてあることは事実なのに、役所の外の人には意味が分からない。この一点で損をしている書類が本当に多いのです。
これは能力の問題ではありません。役所の中では通じる言葉で何年も仕事をしてきたので、それが内側の言葉だと気づく機会がなかった、というだけの話です。置き換えの型を知れば済みます。
「担当していた業務」ではなく「果たした役割」を書く
行政の職場では、自分の仕事を「担当事務」で説明する習慣があります。分掌が決まっているので、それが自然な説明の仕方なのです。
ところが職務経歴書にそのまま「介護保険課で認定事務を担当」と書くと、読む側にはその人が何をできる人なのかが一切分かりません。事務の名前は、役割の説明になっていないからです。
書き換えるコツは、その事務のなかで自分が誰と何を動かしていたのかを一段ほどくことです。認定事務であれば、申請者と面談し、主治医や事業者から情報を集め、審査会に諮る資料を整え、期限内に処理を回していたはずです。そこまで開くと、外の人にも輪郭が見えます。



「担当していました」で止めず、「誰と、何を、どこまで」まで開くのが置き換えの基本です。
制度名・部署名の固有名詞は、説明に開く
「第2次総合計画実施計画の進捗管理」「◯◯市地域福祉推進事業」——役所の文書ではこれで通りますが、外に出すと通じません。固有名詞は、それが何をする取り組みなのかに開いて書き直します。
そのまま書くと伝わらない例
・「第2次総合計画実施計画の進捗管理を担当」
・「◯◯市地域福祉推進事業の事務局」
前者は、複数部署にまたがる年度計画の進み具合を集約し、遅れている取り組みを洗い出して所管課と調整していた仕事です。後者は、地域の団体と自治体をつなぐ会議を運営し、日程調整から資料作成、合意形成までを回していた仕事でしょう。この「実際にやっていたこと」の水準まで下ろせば、固有名詞は要らなくなります。
判断の目安はひとつです。家族に読ませて意味が通じるかどうか。通じなければ、まだ内側の言葉のままです。
異動が多い経歴は、時系列ではなく「共通する型」でまとめる
2〜3年ごとの異動で、税務、福祉、企画と分野がまるごと変わっている。行政職の経歴では珍しくありませんが、これを異動順にただ並べると、一貫性のない経歴に見えてしまうという問題が起きます。
ここで効くのは、分野をまたいで自分がいつも同じことをしていた部分を見つけて、そこを軸に据えるやり方です。分野は違っても、やっていた型は共通していることが多いのです。
【分野をまたいで残る「型」の例】
・利害の異なる関係者を集めて、落としどころを作る
・大量の申請や届出を、期限内にさばく仕組みを整える
・前例のない案件を、根拠を探して処理できる形にする
・外部の事業者や団体と、条件を詰めて契約に持っていく
軸が決まったら、経歴欄の各ブロックではその軸に関係する仕事を厚く、関係しない仕事は行数を削って書きます。全部を均等に書くと軸が埋もれるので、意識的に濃淡をつけるのがポイントです。



異動が多いのは不利だと思っていました…



並べ方の問題です。軸を決めて濃淡をつければ、幅の広さはそのまま強みになります。
6ブロックの埋め方|例文つき
置き換えの型が分かったところで、ブロックごとに手を動かしていきます。例文は民間企業の営業職を想定した汎用形です。ご自分の職種に合わせて中身を差し替えてお使いください。
①要約|200字で「何をしてきた人か」を言い切る
要約には、一貫して何の仕事をしてきたのかを入れます。異動でいくつもの分野を経験した場合も、前の章で決めた軸に寄せてまとめます。



200字前後で収まると、枠に対してちょうど良い分量になります。
商社の営業部門で6年間、法人営業を担当してきました。未開拓の市場に対する新規顧客の開拓を主軸に、市場分析から提案、契約後の関係維持までを一貫して担当しています。担当エリアでは長期契約の獲得によって収益基盤の安定に寄与しました。業種の異なるクライアントと条件を詰めて合意に持っていく進め方は、貴社の法人向け事業でも活かせると考えています。(189字)
枠に収める都合上、ここに入れられるのは軸ひとつだけです。書きたいことが3つある場合、2つは経歴欄と自己PRに回します。要約で全部言おうとすると、必ず入りきりません。
②経歴|新しい順に、4行のブロックで積む
経歴は直近のものから遡って並べます。読む側が知りたいのは今できることなので、いちばん新しい経歴が先頭に来る形が標準です。
1社(1部署)につき、在籍期間・組織名・担当・実績の4行を1ブロックとして積んでいきます。異動があれば部署ごとにブロックを分けます。
【在籍期間】20YY年MM月~現在
【企業名】株式会社◯◯商事
【部署名】営業部 営業推進課
【担当業務】法人営業(新規開拓中心)
・新規顧客の開拓
・市場分析と営業戦略の立案
・商品やサービスのプレゼンテーション
【実績】
・未開拓市場からの新規顧客獲得
・重点市場でのシェア拡大
・長期契約の獲得による収益基盤の安定化
—
▼異動や前職がある場合は、同じ形で下に続けます▼
【在籍期間】20YY年MM月~20YY年MM月
【企業名】株式会社◯◯商事
【部署名】営業部 取引管理課
【担当業務】
・顧客情報の管理とデータベースの更新
・取引条件の交渉および契約管理
・取引先からの問い合わせ対応とトラブル対応
【実績】
・顧客情報管理の仕組みを整え、データの精度と検索性を改善
・複数の主要取引先と再交渉し、より有利な条件での契約更新を実現
・トラブル対応の手順を確立し、部内で共有
行政職の場合、【企業名】は自治体名、【部署名】は課・係名に置き換えます。【担当業務】には、前の章でやったとおり事務の名前ではなく開いた説明を入れてください。
③活かせる知識・経験・技術|「できる範囲」まで書く
この欄は、応募先で何ができる人なのかを示す場所です。単語だけを並べると、どのくらいできるのかが伝わりません。
■活かせる経験、知識、技術
- 営業戦略の企画・実行(担当エリアの年間計画の立案から実行まで)
- クライアントとの折衝(条件交渉から契約締結までを単独で担当)
- チーム管理(後輩3名の育成と案件配分)
- データ分析と市場調査(自社データと公開統計を用いた市場の切り分け)
- プレゼンテーション(決裁者向けの提案資料の作成と説明)
カッコの中が「できる範囲」の説明です。単語だけの箇条書きと、範囲つきの箇条書きでは、読んだあとに残る像がまったく違います。
④資格・語学|応募先に関係するものだけ
資格は、応募するポジションに関連するものだけを書きます。関連の薄い資格を並べると書類が長くなり、肝心の情報が埋もれます。



例えば、私は中高の国語の教員免許を持っていますが、IT企業の法務部門には関連性が薄いため、書いていませんでした。
漢字検定4級や英検4級のように、学生時代に取る水準の資格も省きます。語学は、求人票に水準の指定がある場合に、それを満たしているなら書く、という判断でよいと思います。
そもそも資格よりも、知識・経験・技術のほうが重く見られます。資格欄が寂しいことを気にする必要はありません。この点は別記事にまとめています。


⑤PCスキル|操作できる水準まで書く
「Word、Excel、PowerPointを一般的なレベルで活用可能」——この書き方だと、どこまでできるのかが読む側に判断できません。ソフトごとに、何が作れるかを書きます。
■PCスキル
- Word:報告書、見積書、礼状などの社内外文書が作成できるレベル
- Excel:IF関数、VLOOKUP、ピボットテーブルが使用できるレベル
- PowerPoint:会議資料、提案資料が作成できるレベル
行政職の方は、庁内の業務システムや財務会計システムの名前をそのまま書いても外では通じないので、「◯◯の管理システムを用いた処理」のように用途で書くと伝わります。
⑥自己PR|経歴欄に書いた事実だけを根拠にする
自己PRは書類の締めくくりです。ここで大事なのは、経歴欄に書いていない話を持ち出さないこと。前のブロックで挙げた事実を根拠として使う形にすると、書類全体が一本の筋になります。
6年間の法人営業を通じて、新規顧客の開拓に取り組んできました。強みは次の3点です。
- 新規顧客の開拓:未開拓市場に対象を絞り、市場分析にもとづいてアプローチを設計してきました。担当エリアの顧客基盤の拡大につながっています。
- 長期的な顧客関係の構築:一度の受注で終わらせず、相手の課題に合わせた提案を続けることで、複数の長期契約を獲得しました。
- チームでの成果づくり:後輩3名の育成と案件配分を担い、個人ではなく部門としての目標達成に関与してきました。
業種の異なる相手と条件を詰めて合意に持っていく進め方は、貴社の法人向け事業でも活かせると考えています。
3点それぞれが、経歴欄の【担当業務】【実績】に対応しているのが分かるでしょうか。自己PRは新しい情報を足す場所ではなく、書いてきた事実に意味を与える場所です。
提出前に、ひとりよがりを自分で外す
6ブロックが埋まったら、提出の前にもうひと手間かけます。
ひとりで書き上げた書類には、必ず自分をよく見せようとした痕跡が残ります。契約実績50件を100件にしたくなる、人と話すのが苦手でも得意だと書いてしまう。「成功したい」という気持ちが強いほど、そうなるのが人の常です。



私も実際に大手IT企業で採用に携わったことがありますが、採用する側の立場だと、飾った情報ではなく、その人がこれまでに真に経験してきたことを知りたいと思うものです。
企業から見れば、職務経歴書は会ったことのない人を知るための書類です。飾りが多いほど、知りたい情報が減ってしまいます。
とはいえ、書いた直後の自分では飾りに気づけません。そこで、提出前に自分で外すための手順を3つ挙げておきます。
【提出前の3手順】
1.一晩置いてから読む(書いた直後は判断できません)
2.求人票の要件と1行ずつ突き合わせる(対応する記載がない要件は書き足す)
3.声に出して読む(言いすぎている箇所は音にすると引っかかります)
この3つで、たいていの飾りは落ちます。それでも不安が残る場合は、採用する側がどこを見ているのかを知るのがいちばん早い近道です。採点基準が分かれば、直すべき箇所が自分で判断できるようになります。


まとめ|6ブロックを埋めて、内側の言葉を外す
職務経歴書は作文ではなく、埋めていく書類です。この記事でやったことを振り返ります。
・6ブロック(要約/経歴/知識・経験・技術/資格・語学/PCスキル/自己PR)に分けて埋める
・担当事務の名前ではなく、誰と何をどこまでやったかに開く
・制度名や部署名の固有名詞は、家族に通じる説明まで下ろす
・異動が多い経歴は、分野をまたいで残る「型」を軸に据えて濃淡をつける
・自己PRは、経歴欄に書いた事実だけを根拠にする
・提出前に、一晩置く/求人票と突き合わせる/音読する



行政の仕事は中身が濃いのに、内側の言葉のままだと伝わりません。置き換えるだけで書類の見え方は変わります。
埋め終わったら、次はその書類が採用担当にどう読まれるかを確認する段です。作る側の視点で完成させたものを、読む側の視点で点検すると、直すべき箇所がはっきりします。
書類が固まったら、この先の話














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