「20代におすすめのエージェントって、どこですか」——この聞かれ方をするたびに、順番が逆だと感じます。20代がつまずくのは、どこに登録するかではなく、登録したあとに順番に訪れる4つの場面のほうだからです。
公務員から大手IT企業に移り、いまは20代の中途面接を担当しています。同時に、自分が動いたときはエージェントを使った側でもありました。両側から見ていると、20代の転職はどこで消耗するかがほぼ決まっています。この記事は活動が進む順に、その4つの場面だけを扱います。
登録直後に届くのは、求人ではなく大量の候補
最初に起きるのは、求人が来ないことではなく、来すぎることです。経歴で絞り込む材料が少ないぶん、条件に引っかかる求人が広く残る。しかも20代を採りたい企業の数は他の年代と比べものになりません。結果として、初週から数十件の候補が並びます。
これを届いた順に一件ずつ吟味しようとすると、2週間で手が止まります。20代の相談で「求人は来るのに前に進まない」という状態を聞くとき、たいていここで止まっている。選ぶ基準ではなく、見送る基準を先に3つ決めてしまうほうが早く進みます。
- 動かせない生活条件——勤務地や通勤時間のような、あとから交渉できない条件は最初に切る。ここを曖昧にしたまま進めると、内定が出てから振り出しに戻ります。
- 育てる前提があるかどうか——20代向けの求人票なのに、研修・OJT・配属後の流れが一行も書かれていないものは、実質的に即戦力募集です。
- 職種が大枠のままか——「営業」「企画」だけで、何を担当するかが書けていない求人票は、入社後に決まる部分が大きい。20代は特にここで想定が外れます。
幅広く扱うところと領域を絞ったところで、届く候補の量も種類も変わります。その違いは総合型と特化型の選び分けにまとめてあります。
面談で「成長できる環境」と言うと、絞り込みが止まる
次に来るのが担当者との面談です。ここで20代が最も口にする言葉が「成長できる環境がいい」で、これが提案の質を落とします。理由は単純で、成長できないと言っている会社が存在しないから。担当者の側から見ると、この一言では候補を一件も削れません。削れないから、広く送るしかなくなる。1件目で「幅広くご提案しますね」と言われたら、それは配慮ではなく、絞る材料が渡っていないという合図です。
渡すべきは志望動機のような完成品ではありません。まだ形になっていない材料で十分です。やった事実を一つ、避けたい状況を一つ、自分では判断がつかない点を一つ。この三つが揃うだけで、担当者は候補を半分以下に絞れます。
たとえば「前職で新人の受け入れ手順をまとめ直した」「仕様が決まらないまま着手して手戻りが続く進め方が苦しかった」「そのうえで、いまの職種を続けるべきかは判断がついていない」。この三つを渡された担当者は、少なくとも要件が固まらないまま走る現場を候補から外せます。志望動機として完成していなくても、絞り込みには十分に働きます。
とくに三つ目を言えるかどうかが20代の分かれ目です。「やりたいことがまだ決まっていない」「営業を続けるべきかも分からない」と正直に言った人のほうが、結果的に提案は鋭くなります。逆に、決まっているふりをすると、その架空の軸に沿った求人が届き続けることになる。避けたい状況を言うときも、「残業が多い」ではなく何が起きて嫌だったのかまで言うと精度が変わります。同じ残業でも、量が問題なのか、直前に降ってくることが問題なのかで、合う会社はまったく別です。
書類は通る。崩れるのは、そこから先の日程
20代は書類の通過率が高い。職歴が短いことは、書類段階ではほとんど減点になりません。私が20代の書類を見るときに確認しているのは、在籍年数ではなく「次に何をしたいかが一行でも書いてあるか」くらいのものです。
問題はその先で起きます。通過率が高いということは、面接が同時に立ち上がるということです。10社に出して6社通れば、翌々週には6社分の一次面接が並ぶ。在職中なら、そこに有休の調整も乗ってきます。1社ずつなら答えられたはずの質問に、準備が薄いまま向かうことになる。20代の見送りには、実力ではなくこの過密が原因のものが相当あります。
面接する側からも、これは見えます。同じ週に3社受けている候補者が、2社目以降で明らかに答えが雑になっていることがある。志望動機が前の会社と混ざっていたり、こちらの事業の説明を聞き返してきたり。本人の関心が低いわけではなく、単に準備が追いついていないだけです。ただ、面接の場では区別がつきません。
対策は担当者への一言で済みます。「面接は週2社までにしてください」と最初に伝えておく。日程調整は本来エージェントの仕事なので、遠慮するところではありません。ただし黙っていると、担当者は早く進むほうを選びます。企業側も待ってはくれるので、詰め込む必要はない。第二新卒にあたる時期の人は、ここに退職理由の準備も重なります。その組み立ては第二新卒が短期離職をどう説明するかで扱っています。
見送りが2社続いたときに、担当者から取りに行くもの
最後の場面が、見送りが続いたときです。20代は初めての転職であることが多く、2社落ちた時点で活動そのものを止めてしまう人がいます。ここで止まるかどうかで、その後の3か月が変わります。
やることは一つで、担当者に見送り理由を取りに行くことです。ただし「なぜ落ちましたか」と聞くと、ほぼ「ご経験がもう少しあれば、とのことでした」が返ってきます。これは企業が担当者に伝える定型で、中身がありません。実際には、20代の見送り理由が本当に経験不足であることは多くない。私自身、20代を見送るときに人事へ伝えるのは「話が他責で止まっていた」「志望理由がどの会社にも使える内容だった」といった、経験とは別の話です。
だから聞き方を変えます。「どの質問の答えが弱かったか、企業から具体的に何か聞いていませんか」と、答えの単位まで下げて尋ねる。担当者は企業と直接やり取りしているので、定型の裏にある一次情報を持っていることがあります。ここを引き出せる担当かどうかが、20代にとっての当たり外れです。持っていないなら、その人はあなたの選考を追いかけていません。
取れた材料は、次の面接までに一つだけ直せば十分です。20代の場合、直すのはたいてい経歴ではなく、同じ事実の言い方のほうです。「上司と合わなかった」を「裁量の小さい環境で、提案を形にできなかった」に置き換えるだけで、こちらの受け取りは変わります。事実は何も動いていません。
4つの場面を先に知っておくだけで、消耗は減る
候補が多すぎる段階、面談で絞れない段階、面接が重なる段階、見送りが続く段階。20代の転職で起きることは、この順番でだいたい決まっています。どこも「いいエージェントを引く」では解けず、こちらから一言渡すだけで解ける。それが分かっているだけで、活動の消耗はかなり減ります。
逆に言えば、止まっている人はどこか一つの場面で黙っていることが多い。転職できる人・できない人の違いで書いた3つの行動差も、突き詰めるとこの「渡すか、黙るか」の差です。


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