1回目の転職活動で、私は書類を50社ほど出しました。そのうち書類が通ったのは10社。面接に進む前に、40社に落ちています。
当時の私は、この結果を「面接が下手だから」だと思っていました。だから対策として買ったのは面接の本でした。いま採用する側になって振り返ると、これは完全に見当違いです。40社は面接に行く前に落ちているのだから、直すべきは面接ではありませんでした。
面接動画を見返して評価コメントを書くのが、いまの仕事の一部です。その立場から言うと、「落ちる」と一言でまとめられている現象は、実際には段階ごとにまったく別の理由で起きています。だから最初にやることは、対策を増やすことではなく、自分がどこで止まっているのかを特定することです。
通過率は段階ごとに違う。だから止まる場所で意味が変わる
私がいま見ている選考の、1年ぶんの数字を並べます。応募から入社までを追える形で集計したものです。
| 段階 | 次に進む割合 | 1回目の私 |
|---|---|---|
| 書類選考 | 5〜6割 | 50社中10社=2割 |
| 一次面接 | 約26%(4人に1人) | 10社中3社=3割 |
| 二次以降 | 3割弱 | 3社中1社 |
見ていただきたいのは、選考全体でいちばん人が減るのは一次面接だという点です。4人と会って、次に進んでもらうのは1人。ここが最大の関門で、面接対策の本が厚いのには理由があります。
そのうえで、1回目の私の数字をもう一度見てください。書類は2割で、面接は3割です。面接の通過率は、私が見ている選考の平均(約26%)を上回っていました。つまり会ってもらえたときの勝率は、最初から悪くなかった。詰まっていたのは書類のほうだったのに、私は面接の練習をしていたわけです。
ちなみに、うちの選考は今年から「多少足りない人でも書類は通す」方針に変えました。書類で絞り込んでも、内定辞退の数がまったく減らなかったからです。書類の壁は、会社の方針ひとつで動く程度のものでもあります。そこで止まっているのは、あなたの能力の問題ではないことが多い。
書類で止まっている人|経歴ではなく、言葉が減点されている
書類を読む側にまわって分かったのは、落としているのは経歴そのものではないということです。減点しているのは、ほとんどが言葉の選び方です。
実際に私が「これは評価できない」とコメントを書いた表現を、そのまま挙げます。
- 「迅速」「正確」「臨機応変」……便利な言葉が並ぶと、逆に中身が見えなくなります。誰にでも当てはまる言葉は、誰のことも説明していません。
- 「目標達成へのやり抜く力」……いくらでもそう書けてしまう。裏づけの一行がないと、書いていないのと同じ扱いになります。
- 自分で自分の協調性を保証する書き方……「私の協調性の証だ」と本人が書いていると、読む側は「誰と比べてそう言えるのか」で止まってしまいます。
- 「社内表彰を3度受賞」……回数だけが書かれていると、どんな価値のある表彰なのかが分かりません。数を出せば強くなるわけではないのです。
もうひとつ、規模の大きい実績ほど起きやすい落とし穴があります。大きな売上の数字だけが書かれていて、そこに至る過程が書かれていないケースです。
私は書類を読むときの基準を明文化していて、この形の実績は評価に加えないことにしています。何を達成したかではなく、どこで詰まって、そのとき自分が何を決めたかが書かれていない実績は、その人が再現できるかどうかを判断する材料にならないからです。立派な結果は、立派であるがゆえに「この人が動かしたのか、環境が良かったのか」が分かりません。
ちち「数字は大きいけれど、この人が何をした人なのかが読み取れないな……」
公務員の職歴でこれをやると、影響がさらに大きくなります。担当した制度名や事務の名前だけが並ぶと、読む側には情報がほぼ届きません。行政の仕事を民間に伝わる言葉に置き換える手順は、「公務員の職務経歴書の書き方」に分けて書きました。書類で止まっている自覚がある人は、面接対策より先にそちらです。
一次面接で止まっている人|4人に3人が落ちる場所で見ているもの
ここがいちばん人が減る段階です。そして落とす理由は、能力の不足よりも「一緒に働く姿が浮かばない」に集約されます。具体的には、こういう瞬間です。
聞いたことと違う答えが返ってくる
「これまでで一番工夫したことは?」と聞いたのに、職務の説明が延々と続いて「工夫」の話が出てこない。あるいは話が長すぎて、結局なにが言いたいのか分からない。



「この受け答えだと、入社後も会話の認識がずれて、すり合わせに時間がかかりそうだな……」
面接は頭の良さを試す場ではなく、一緒に仕事ができるかを確かめる場です。だから会話が噛み合わないことは、それ自体が判断材料になります。まず質問に一言で答え、それから理由や具体例を足す。順番を変えるだけで印象は変わります。
志望した理由が、見た目や条件で止まっている
実際に面接で言われて、そこで決まってしまった言葉をふたつ挙げます。
ひとつは「完全にビジュアル的なもので、素敵だなと思って応募した」。サービスの見え方に惹かれたという話だけで終わり、事業の中身やもうけの仕組みへの言及がありませんでした。もうひとつは「一言で言うならば年収も上げたいが一番」。転職の軸が条件ひとつだと、提示額の高い求人に幅広く出している状態が透けます。
どちらも正直な答えで、嘘をつくべきだとは思いません。ただ、こちらが知りたいのは「なぜうちなのか」なので、そこに答えが返ってこないと判断ができないのです。
本人が自分で不適合を宣言してしまう
面接の最後に、本人からこう言われたことがあります。「自分は性格上、大きい会社のグループ会社のほうが向いているんじゃないかと思っていて、御社だけがベンチャーなんです」。
これは、こちらから覆せません。合わないと本人が言っているものを「合いますよ」と説得して入ってもらう理由が、採用する側にはないからです。不安を正直に言うのは良いことですが、「だから自分はここでこう働ける」まで続けて言う。そこまで言えば、不安の共有は前向きな材料に変わります。
なお、一次で聞かれる質問そのものを組み直したい場合は、「想定質問は自分視点で作ると外れる」の手順が使えます。自分が話したいことから問いを作ると、面接で実際に聞かれることとずれます。
二次以降で止まっている人|求められる答えの深さが変わる
一次を通っているなら、受け答えの基本と人柄はすでに合格しています。二次以降で落ちる理由は別のところにあって、多くは「その役割を任せたときに何が起きるか」が見えないことです。
分かりやすい例をひとつ。管理職の候補として来た方が、面接の中で「17時退社希望」と言われたことがあります。希望としてはまったく正当です。ただ、その役割は現場を持ちながらチームを見る前提だったので、そこで判断がつきました。条件の希望そのものではなく、希望と役割が噛み合っているかを見ています。
一次と二次で何が入れ替わるのかは、「二次面接で落ちる人・受かる人」に整理しました。同じ質問でも、求められている深さが変わります。
面接の外で落ちている人もいる
見落とされがちですが、面接の中身とは無関係に終わっているケースがあります。選考のやりとりそのものが、評価の対象になっているからです。
実際にあったのは、書類を添付して送れないまま連絡が続いた方、面接の時間に現れず、こちらから掛けた電話番号がすでに使われていなかった方です。書類の内容を読む前に終わっています。
逆に、こちらが黙ってしまっている場合もあります。連絡が止まったまま何週間も過ぎるとき、企業側で何が起きているのかは「「サイレントお祈り」の理由と対処法」に書きました。待つべき期間の目安も、そちらに寄せています。
オンライン面接の基本動作も同じ扱いです。接続がうまくいかない、音声が途切れる、カメラがオフのまま——内容に入る前に印象が決まってしまいます。前日までに動作確認、当日は早めに入室、明るい場所でカメラとマイクを確認する。ここは練習すれば全員が同じ水準まで行けるので、落としどころにされると痛いところです。
段階を問わず、残った人に共通していたこと
最後に、段階の話とは別の軸をひとつだけ。書類でも面接でも、私の記録上残っている人にはひとつ共通点があります。
職歴が空いている期間、在籍の短さ、うまくいかなかった仕事。こちらが質問するより先に本人から説明があった人は、ほぼ全員が次の段階に残っています。逆に、こちらが聞いてから答えが出てくると、内容が同じでも「隠していたのでは」という色がついてしまいます。
1回目の転職活動で、私はこれができていませんでした。公務員だったことをどう受け取られるかが不安で、聞かれるまで自分からは触れなかった。いま採用する側から見ると、あれは黙っていた分だけ損をしていたと思います。触れられたくない話題は、こちらも気を遣って踏み込みません。結果として説明する機会そのものが失われます。
2回目の転職活動は、書類15社で7社が通り、3社の最終まで進んで、3週間で終わりました。経歴が劇的に良くなったわけではありません。変わったのは、どこが詰まっているのかを先に特定してから手を打つようになったことと、都合の悪いことを自分から先に出すようになったことの二つです。
面接の本を買う前に、まず数えてみてください。出した数、書類が通った数、面接を通った数。この3つが分かれば、直す場所はひとつに絞れます。










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