試用期間にミスマッチを感じたら|見極めと対処の手順

試用期間中の転職を象徴する若手のビジネスパーソンの写真

入社して数週間から数か月。「ここは、たぶん合っていない」という感覚が、消えないまま残っている——。

試用期間中にこれを感じると、判断がとても難しくなります。まだ何も分かっていないだけかもしれないし、早く動いたほうがいいのかもしれない。どちらもありえるからです。

この記事では、試用期間という限られた時間の中で合うか合わないかを見極め、辞めると決めた場合にどう動くかまでを順に扱います。まだ在籍している段階の人に向けた内容です。

先に前提を1つ片づけます。ここを誤解していると、判断そのものが歪みます。

目次

試用期間は「お試し」ではない

試用期間という呼び方のせいで、まだ正式な社員ではない、いつでも切られる立場だと思っている人がいます。これは事実と違います。

試用期間中でも労働契約はすでに成立しています。あなたはその会社の労働者であり、法律上の保護も受けています。押さえておくべき点は4つです。

解雇には合理的な理由が必要

試用期間中は本採用後より広い範囲で解雇が認められると解されていますが、会社の自由になるわけではありません。客観的に合理的な理由と、社会通念上の相当性が求められます。「なんとなく合わない」で切ることはできません。

14日を超えて働いたら、解雇予告が必要になる

試用期間の開始から14日以内であれば解雇予告は不要ですが、それを超えると30日前の予告、または30日分以上の解雇予告手当が必要になります(労働基準法20条・21条)。

自分から辞める場合は、原則2週間前の申し出

期間の定めのない雇用であれば、申し出から2週間で退職できます(民法627条)。就業規則に「1か月前」と書かれていることも多いので、まず規則を確認し、可能なら会社の求める期間に合わせて調整するのが穏当です。

社会保険・有給は試用期間でも対象

加入条件を満たせば社会保険は入社日から適用されます。有給休暇も、入社から6か月継続して勤務すれば発生します。試用期間だから対象外、ということはありません。

つまり、あなたは立場の弱い見習いではなく、判断する側にも立っているということです。ここを踏まえて見極めに入ります。

合っているかを、自分の側から確かめる

会社があなたを見ている期間ですが、同時にあなたが会社を見ていい期間でもあります。片方向の評価だと思い込むと、ただ耐えるだけの時間になってしまいます。

5つの観点で、事実として書き出す

感覚で「合わない」と判断すると、あとで理由を説明できません。次の5つの観点で、起きたことを事実として書き出していきます。それぞれ「よくある・普通・気になる」の3段階で十分です。

業務理解

自分の役割と担当業務を説明できるか。分からない部分が「教われば解ける」ものか、「そもそも決まっていない」ものかも書き分けます。

目標達成

試用期間中の目標に対する進み具合。目標がそもそも示されていないなら、それ自体を記録します。

スキルの適合

持っているスキルと業務が要求するスキルのギャップ。埋まる見込みがあるギャップか、職種選びの段階のずれかを区別します。

職場文化

コミュニケーションの取り方、物事の決まり方、価値観。「誰と」ではなく「どの場面で」引っかかったかを書くと、あとの仕分けが楽になります。

生活リズム

労働時間・通勤・休日が、入社前に聞いていた条件と一致しているか。ここは感想ではなく求人票との突き合わせで書けます。

ひとつ、評価する側からの種明かしを。私は自社の評価制度をゼロベースで作り直した側で、職種別の評価項目と賞与の役職係数を明文化しました。裏を返せば、それまでは評価の物差しが言葉になっていなかったということです。試用期間中に「自分は何で評価されるのか」が見えないなら、上司に評価項目をそのまま聞いてください。答えが曖昧なら、それはあなたの適応の問題ではなく、会社側の仕組みがまだ無いという情報です。ミスマッチの正体を切り分ける、大事な材料になります。


ここまでを書き出すと、「なんとなく合わない」だった感覚が、具体的な項目の集まりに変わります。次の章では、その項目を仕分けます。

「合わない」を、変えられるものと変えられないものに分ける

前章で観点ごとに書き出したら、次にやることは仕分けです。ここを飛ばして「合わない」とだけ結論すると、辞めても同じことが起きます。

仕分けの基準は1つだけ。自分の動き方を変えれば消えるものか、会社の側が変わらないと消えないものかです。

動けば変わる側
  • 仕事の進め方が分からない、手順が掴めない
  • 特定の人と噛み合わない(相手が1人か2人に限られている)
  • 知識やスキルが足りず、任される範囲が狭い
  • 質問しにくくて溜め込んでいる
会社が変わらないと消えない側
  • 事業そのものに関心が持てない
  • 評価の仕組みや昇給の考え方に納得できない
  • 労働時間・休日・勤務地が求人票と違う
  • 組織全体の物事の決め方が、自分の許容範囲を超えている

仕分けた結果で、やることが変わります。動けば変わる側だけなら、残る選択肢に十分な望みがあります。まだ数か月しか経っていないのだから当然で、これは「合っていない」ではなく「まだ慣れていない」です。

一方、会社が変わらないと消えない側に主要な不満が乗っているなら、時間をかけても解消しません。特に労働時間や勤務地が求人票と違うケースは、こちらに入ります。ここに該当する場合は、早く動いたほうが損失が小さくなります。

ちち

採用する側から見ても、この2つは扱いがまったく違います。前者は面談で解ける話ですが、後者は会社が譲らない限り解けません。

「いつまでに決めるか」を先に決めておく

見極めでいちばん多い失敗は、判断を先に延ばし続けることです。もう少し様子を見よう、もう1か月経てば分かるかもしれない——そうしているうちに試用期間が終わり、本採用になり、辞めにくくなっていきます。

これを避けるには、感覚ではなく日付で区切るのが確実です。

【期限の置き方】
・試用期間の終了日から1か月前を「判断日」としてカレンダーに入れる
・それまでは記録と仕分けに集中し、結論を出さない
・判断日に、5つの観点と仕分けの結果を見返して、続けるか動くかを決める

1か月前に置く理由は、辞める場合の申し出(2週間〜1か月)に間に合わせるためです。判断日を試用期間の最終日に置くと、動く時間がなくなります。

なお、いまの違和感がそもそもなぜ生まれたのか——採用の段階で何がすり合っていなかったのか——を知っておくと、次の職場選びで同じことを繰り返しません。採用する側から見た原因はこちらで扱っています。

辞めると決めたら|短い在籍をどう書くか

ここがいちばん手が止まるところです。数か月で辞めた職歴を、どう書けば不利にならないのか。結論から言えば、隠さずに書いて、理由を先に説明するのが唯一の正解です。

書類にするときのポイントは4つです。

短い在籍も正直に書く

在籍期間を明記し、試用期間中の退職という事実をぼかしません。読む側は入社日と退職日を必ず見るので、ぼかした書き方はそれ自体が減点になります。

経験は「短い在籍の分」も含めて具体的に

数か月でも、担当した業務と関わった案件は書けます。そのうえで、アピールの重心は前職までの実績に置くのが現実的です。

動き直す理由は事実ベースで

例:「配属後の業務内容が求人票と異なっていたため、次は業務範囲を選考の段階で確認したうえで応募している」。確認した事実と、次にとった対策のセットで示します。

取り繕った言い換えはしない

「新たな挑戦を求めて」のような定型の言い換えは使いません。読む側には不満の言い換えに見えます。在籍が短いときほど、確認不足だった点と、次はどう確かめたかをそのまま書くほうが通ります。

在籍が短いと、経歴の棚卸しそのものが難しく感じられます。前職までの分をどう整理するかは、こちらにまとめています。

在籍中に動く場合は時間が限られます。求人を自分で探しきれないときは、エージェントを使うかどうかも早い段階で決めておくと動きやすくなります。

まとめ|試用期間は、あなたも見ていい期間

この記事でやったことを振り返ります。

・試用期間でも労働契約は成立していて、解雇にも辞職にもルールがある
・合うかどうかは、業務理解/目標達成/スキルの適合/職場文化/生活リズムの5つで見る
・書き出した不満を「動けば変わる側」と「会社が変わらないと消えない側」に仕分ける
・判断は感覚に任せず、試用期間終了の1か月前を判断日として日付で区切る
・辞めると決めたら、短い在籍は隠さず書いて理由を先に説明する

合わないと感じたこと自体は、失敗ではありません。それに気づける状態にあることのほうが、気づかず数年いてしまうよりずっと健全です。あとは、気づいた時点で何をするかだけの問題になります。


入社前の段階に戻って、次はミスマッチを防ぎたい

すでに辞めた/こじれてしまって、立て直したい

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この記事を書いた人

サビ残100h/月の公務員から30歳で大手IT企業に転職し、年収2倍(360→750万)・残業10h未満を達成。現在はベンチャー企業の執行役員として採用を管掌し、累計1,000名以上の面接と5,000枚以上の履歴書・職務経歴書チェックを通じて200名以上の採用に関与(新卒〜執行役員クラス)。RPOしていた採用の内製化、ATS導入による一元管理、多拠点採用まで自ら設計・運用しています。"採用する側"の本音をもとに、キャリアに悩む方々の道標となる情報を発信しています。

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